米山の麓より引用「自由」

テレマークスキーを始めて、ネットで色々調べている時に「aki」さんというテレマーカーのブログに辿り着きました。ブログのタイトルは「米山の麓より」でした。

「自由」という記事を読んだとき、実際に滑っている自分のイメージとは結び付かず、それでも年に何度かは自分の感覚がどうなっているのかを見直すためにブックマークしておいた記事を読み返していました。

残念なことにそのブログサービスが終わってしまい、全て見ることができなくなりました。コメント等でやり取りしたこともなかったので、ご本人にお礼を伝えることもできないまま、長い歳月が過ぎました。

今はSNSが普及して、ブログを更新する人も減ってきたし、これからは文章はAIが作る時代になっていくのでしょうが、これはAIに書けるものではありません。

まだここに書かれているような感覚は掴めていないのですが、私のバイブルとして何度も見直しています。これを書いたakiさんにお礼を伝えたくて、失礼かと思いましたが、当時スクラップした記事をそのまま引用して公開しています。

私のブログが検索でヒットするようになれば、akiさんを見つけられるかもしれません。

2011.3.8

自由

もっと自由になれる 

あきらめてはいけない

テレマークは決して難しくはない

難しいと思ってしまうと果てしなく難しく感じてしまう

実は単純で簡単な動作なのに、習得に時間がかかるだけなのだ

テレマークスキーに上手に乗れるようになるまでの過程

それは自転車に乗れるようになるまでの過程とよく似ている

乗れてしまえば簡単で単純な動作だが、乗れるまでにはある程度の時間がかかる

自転車を手にしてすぐに乗れる子供はまずいない

自由に自転車を操る同級生を横目に必死で練習した記憶がある

何度も何度も転倒して少なからず怪我もした

それでも乗れる距離が少しずつ延びていくのは楽しかった

未知の速度感、未知のバランス感覚を得るには一定の時間が必要

速度が遅ければバランスをとるのが難しい

速度に乗れればバランスをとりやすいのだが最初はなかなか難しい

気持ちだけで頑張っても制御できない速度は体が拒否してしまう

しかしいずれは誰もが自由に乗れるようになる

目の前だけを見ていた目線は速度に応じて先に向かうようになる

ペダルを漕ぐと左右のバランスは崩れるはずだがそれもいつの間にか適応する

カーブで車体を自然に倒して横Gに対するバランスをとる事も自然に学んでいく

そしていつの間にか悪路も乗れるようになる

身についたバランス感覚で低速での走行も可能になっていく

片手運転、時には手放し運転だって出来てしまう

前輪を浮かせて歩道に上がることだって簡単だ

調子に乗っていると怪我をしてしまうが‥

さてテレマークの話に戻そう

板の上に足があり、曲がった膝の上に胴体があって頭がある

‥この感覚では上達に限界がある

眼が付いている頭の下に首があり、腕と腰があり、それを膝が支えている

その下には足があり、ブーツに板が付いている

‥この順序はとても重要だ

斜面を滑っているスキーヤーは半ば宙に浮いているのと同じだ

絶対的な基準となる「地面」が存在している平地と異なり、

全てが相対的な存在となってしまう

重要なのは何を基準にどこをどうするかという事だ

例えば、体を基準にして首を曲げて頭を傾けているのではない

スキーヤーは頭を基準にして首を曲げて体を傾けているのだ

しっかりとフォールラインに向かって宙で一定の安定を保つ頭部

そこについている目が司令塔であり、全ての動きの基本となる

目線が一定でないと、体のどこがどうなっているという情報が正確に得られない

情報が正確でないと当然ながら正確な動作は出来ない

直滑降でただまっすぐ滑り降りるだけならある意味簡単だ

しかしブレーキもハンドルも無い車には誰も乗らないだろう

速度や向きを自由にコントロール出来なければ危険なだけ

スキーにおけるコントロール技術の大半を占めるのがターンである

ターンの基本は上下動と旋回(回転)動作だろう

回転というくらいだからそこには「軸」がある

その回転軸はターンに伴って首を支点に振り子のように左右に動いている

この「旋回軸」が体軸そのものと同一であるところに面白さがある

上下動は雪面に対する腰の位置の高さを回転軸に沿って調整するイメージだ

体軸はまっすぐな方がいい

顎をひき、頭、腰、足元が同軸上に存在していた方がいい

ずれた軸にも回転軸は存在するが、上下動に伴いブレ易くなる

顎が前方に出てしまうと腰は相対的に後ろに引けてしまう

そうなると正しい均等加重が行われないので不安定になる

首は柔らかくして肩の力を抜く

力を入れる事と緊張させる事は違う

旋回のコントロールは基本的には腕で行う

上体の先行動作に応じて腰から下が呼応するイメージとなる

上下動はこの体軸に沿って正確に行われる必要がある

これが両足均等荷重の正体だ

テレマークではこの軸が足元を基準として前後にブレる事が多い

最初は一度ブレると次の軸が狂い易く、結果的に足元が不安定となる

両足(つまり二本の板)で均等に雪面を捉えた方が安定するのは明白

二本の板が均等に落ちてくれなければ無駄な力が必要となるだろう

だが、足元を意識して均等に踏もうと思ってもそう簡単ではない

「踏む」事と「押さえる」事は違う

上体の安定こそテレマークターンの最も重要な要素なのだ

では上体をどう安定させるか

まずは体軸の正確な回転が必要

回転軸を正確にするには頭部の安定(視線の安定)が必須となろう

回っているコマは簡単には倒れない

腕を振る理由はここにある

上体の動きが止まったテレマーカーはやがて安定を失う

大きなダイヤルと小さなダイヤルではどちらが滑らかに動くか

微調整するにしても大きなダイヤルの方がやり易いのは明らかだ

小さな腕の動きでは板が安定しない

最初は大袈裟なくらいに大きく振るのが安定への近道となる

腕の振り方は滑りに直結する大変重要な要素である

腕の振り方を変えれば滑りは大きく変わる

言いかえれば腕の振り方を工夫すれば滑りを変えられるという事でもある

しっかりとした上体の旋回動作を意識すると結果的に板も安定して雪を捉えてくれる

膝から下は雪面の情報がブーツを通じて伝わってくるだけである

テレマーク独特のあのスタンスを意識すると加重は前後に逃げてしまう

僅かな膝の前後差を保ち、ただ両足で雪面を捉えていればいい

素早い動作を行えば小さな旋回となり、林間をショートターンで抜けられる

まぁ、言葉で言うのは簡単だが‥

テレマークのショートターンをマスターするまではちょっと時間がかかるだろう

ショートターンが出来ないとしたら動きのどこかに無理があると思った方がいい

ターンのプロセスには二つの側面がある

ひとつはテレマーク姿勢で加重を行う山回り部分

もうひとつは脚の入れ替えを伴い相対的に抜重される谷回り部分

これをデジタルに繋げてはいけない

どの瞬間も動き続けているアナログ的な動作の中にある

ここがテレマークの不思議な安定の正体

一連のスムーズで連続的な動きが動的安定を生む

自転車は走り続ける事によって安定を得ている

ゆっくり走行する事は意外と難しい

これが「動的安定」である

人が当たり前のように出来る二本足歩行もある意味これにあたる

歩いている時はラクなのにただ立っているのは案外難しい

テレマーク初心者はどうしても山回り部分の比重が大きくなる

時間的にも意識的にもそうなってしまうのは仕方ないだろう

だがそのままでは疲れてしまうし、安定も得られない

例えば板そのものだけを雪面に滑らせたとしたら板は素直に落ちていくはずだ

だが人が乗り、加重される事によって雪面の影響を受けて動きが乱れてしまう

つまりターンの加重側面は相対的に不安定であるという事になる

とすれば切替側面(つまり抜重側面)では相対的に雪面の影響を受けにくいはずだ

だが固有の体重がある限り抜重そのものを続ける事は不可能

斜面に於いて体重の一部は推進力として働くが、残りの重力は板の上に働く

加重があるから抜重があり、抜重があるから加重があるのだ

当たり前の事だがターンの加重側面では速度が落ちる

推進力となっていた体重の一部を板の方へ向けるからだ

向きを変えるという事で抵抗によっても速度が落ちる事となる

ターンは向きを変える行為であるだけでなく、減速行為でもあるのだ

ということは切替側面(抜重側面)では元の速度に加速していくという事でもある

ここがテレマークを難しいと感じる要因のひとつ

加速しながら切り替える部分を怖いと感じてしまうのだ

怖いと感じると腰が引けて正しい姿勢が保てなくなってしまう

体軸がブレたままでは回転動作も上下動もうまくいかない

この克服が自由へのカギとなる

ターンにおける一連のプロセスの中で切替部分の時間をしっかりと落ち着いて意識する事

この部分でもしっかりとフォールラインを見続け、腰の位置も上げ過ぎない(抜重し過ぎない)

腕は旋回動作の中でちょうど両サイドにあるはずだからその意識も重要

一瞬ではあるが、この部分をしっかりと落ち着いて意識されていれば次の加重は安定する

加重が安定すると加重の時間が短縮され、相対的に抜重時間が長くなる

つまり雪面に対して安定を得られるようになる

前を見ながら切り替える瞬間の速度を怖いと感じるなら、同じ斜面を直滑降で落ちてみるといい

転倒による怪我に注意しつつ、これ以上出せないという速度を体感してみるのもいい

人間の速度感なんて相対的でいい加減なものである

初めて高速道路を走る時は怖いはずの時速100キロも、慣れてしまえばいつの間にか眠くなる

テレマークに於いてはどんなに素早くしても一定の切替時間は必要

ショートターンの場合は素早く切り替える事より短く踏む事の方が大切

この意識はミドルターンやロングターンにも応用されていく

簡単なリズムを刻んで加重抜重の時間配分を調整する

「イチニ、イチニ」でも「イチニィサン、イチニィサン」でもいい

エイトビートでもいいし、ワルツでもいいだろう

バックカントリーでは変拍子となる事も多いが、そこがテレマークらしいところ

ターン中に目の前の雪面を気にしすぎてはいけない

知らず知らずに頭が前方に傾き、相対的に腰が引けてしまう

といっても最初は無理だろう

意識的に少し先を見るようにすることである

ただ漠然と眺めているだけではあまり意味が無い

頭部を一定にして「しっかりと」見ることである

雪面は足裏からのインフォメーションに頼った方が上手く滑れる

急斜面でもガスってしまえば案外普通に滑れたりするものだ

上下動の範囲は雪質や斜度に応じて調整する

ここは経験を積む必要がある部分

基本的なターンのプロセス自体を変える必要はない

斜度が上がったり、板が走り易い状況では動き全体をコンパクトにする

雪面が荒れている時は体全体を少しだけ緊張させ、上下動をやや抑えるといい

エッジを立てたい時はターン外側の脇腹を絞ってやや外傾姿勢をとる

やや外足側に加重して(つまり外側の腕の意識を持ち)、

上体を板に逆らわないように先行させる

テレマークでカービングターンは邪道かもしれないが、結構楽しいものだ

「切る」事は「ズラす」事と表裏一体である

ズレのないターンは自転車に乗っている感覚に似ている

ペダルを漕がずに前後に固定し、サドルから腰を浮かしてややカーブを描くように走行

この時、後のペダルを踏んでいる側に曲がっていく感覚がテレマークのカービングターン

立ち漕ぎしている時の腰の位置の固定感はスキーのターンにおける腰の固定感とよく似ている

荒れ気味の浅いパウダーは上下動を抑えてベンディング

深めのパウダーは上下動をやや大きめに意識するといい

この微妙な加減は経験を積むしかないが、踏みすぎると沈むので注意

基本的な事を忘れずに落ち着いて滑れば意外と簡単

リズム的には「タテのショートターン」をやればいい

まず素直に落ちていく感覚を持ち、雪質に応じた速度を感じる事

フォールライン上の目標を定めてしっかりと見続ける事

腰をやや落として雪面に対する中間姿勢を保つ事

上体は柔らかくラクに構えて大きく動かし続ける事

雪の状態や斜面に関わらず自由自在に滑る事こそテレマークの王道

もっと安全に

もっともっと自由に滑ろう

春も近い

ピヤシリの森より(名寄ピヤシリスキー場)

この記事を書いたakiさんのことをご存じの方は、どうかメッセージをお願いします。

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