8月10日(日)晴れ
魂の住処と呼べる場所があるならば、間違いなくここだと思う。
沼ノ原——ここは、私にとって「どこかへ行く」ための通過点ではなく「ただ、そこに在る」ための場所です。
過去に、ここからトムラウシ山まで日帰りでアタックしたこともありました。けれど今回は、何かを目指すためでも、記録を塗り替えるためでもありませんでした。
眠れない夜が続いて、宇宙から強いエネルギーが降りているのか、頭が重い。
ただ、深く眠り、魂を鎮めたかったのです。
荷上げボランティアを終えて、沼ノ原に着いたとき、想像していたよりもテントの数は少なく、私の他には2〜3張。ガスがかかり始め、空からはしとしとと雨が落ちてきて、誰もが静かに、そっと自分の時間を守っていました。
テントを張り終えると、私ももう外に出ることはありませんでした。
残っていた梅おにぎりを雑炊にして、自家製のゆず酒をお湯で割り、ちびちびとやりながら、19時にはもう眠りについていたと思います。
この夜の沼ノ原には、宴会の声も、誰かの笑い声もありませんでした。
ただ、雨の音だけが、静かに、優しく、テントを包んでいました。
床のない尖がりテントが、地面にぴたりと寄り添うように張られていれば、雨が降っても、水は中に入ってきません。風がなかったことも幸いでした。
深夜2時、ふと目が覚めると、雨は止んでおり、外には美しい星空が広がっていました。
尖がりテントと星空、そしてトムラウシを一枚に収めたくてカメラを構えましたが、久しぶりに一眼レフを使ったせいか、うまくいきません。三脚も持っておらず、スマホのナイトモードで撮ったほうがよほど綺麗でした。
次に目が覚めたのは、3時半。外はほのかに明るくなり、薄く霞んだトムラウシが姿を見せていました。
ただ、空は全体的に曇っていて、朝焼けは期待できそうにありませんでした。
「今日はダメなパターンかもしれないな…」そう思いながらも「でもいいの、私はここで眠りたかっただけだから」と、お姫さまのように自分に言い訳をして、三度目の眠りにつきました。
そして次に目が覚めたのは6時半で、テントの外は明るい陽の光で満たされていました。
トムラウシには少しだけ雲がかかっていましたが、その輪郭ははっきりとしていて、大沼の水面にくっきりと映り込み、美しい水鏡を作っていました。

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