経験を積みながら、軽量化を

9月19日(木)晴れ

稜線が美しい日高山脈はそこに辿り着くまでに、渡渉と急登があり、さらに登山口までのアクセスが悪いという三重苦なのですが、稜線に立った時の景色はそれまでの苦労を上回るものがあります。

あれだけ苦しかったはずなのに、絶景を見て、温泉に浸かって、家に帰って写真を見返すと、また登りたくなるのです。

人間は忘れる生き物です。

私が初めて日高山脈に足を踏み入れたのは、2015年9月でした。日高山脈の主峰「幌尻岳」に登りましたが、ここは文学者の深田久弥氏が選んだ「日本百名山」に選定されているので、全国から登山者が訪れますが、悪天候で強行突破して亡くなるケースもあります。

私の登山経験はまだ浅かったのですが、条件が良い日に登れ、とても充実した山行でした。しかし、日高の山々は敷居が高くて、その後はなかなか足が向きませんでした。

6年後の2021年9月にチャレンジしたのが「日本二百名山」の「カムイエクウチカウシ」です。通称「カムエク」と言われていますが、ここは沢靴でなければ歩けない長い渡渉があります。本格的な沢歩きはこの時が初めてで、フェルト底の地下足袋を履いて歩きました。

この頃には装備の軽量化が進んでいて、担ぐ荷物の重さが以前の半分ぐらいになっていました。

重すぎる荷物は身体に負担をかけるので、軽いに越したことはありません。しかし、軽量化は耐久性や快適さとのトレードオフです。経験を積みながら、命を守るためのギリギリの装備を見極めていきました。

今は水や食料などの消耗品を除いたテント泊装備のベースウェイト(これ以上減らない重さ)が8kgで落ち着きました。それに1泊2日分の水と食料が+3kg、ドローンやGoproなどの撮影機材を合わせると+2kgになります。

今回のペテガリ岳ではスタート時点の総重量が13kgありました。
私の場合、16kg程度ならばコースタイムで歩けるので、目的地までの到着時間の予想がしやすくなります。気を張っているせいか、身体を休めれば次の日に疲労はほとんど残らず、同じペースで歩き続けることができます。

ペテガリ岳は「日高の女王」と呼ばれています。最寄りの静内側からのアクセスができなくなり、今は浦川側から登るルートが一般的で、往復33km、標高差2,700mという道のりを歩かなければなりませんが、その頂を目指す人は多いのです。

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