一路窯より、意志を受け継ぎました

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7月8日(火)晴れ

人と人は、どこでどう繋がるかわからないものです。

私が陶芸を始めた頃から続けていたブログにコメントをくれたのが「一路窯」の稲垣征弘先生と奥様の由香利さんでした。

旭川・西神楽。大雪山と十勝連峰が広がる、あの美しい土地にある先生の工房に何度も足を運びました。

最初の訪問が2013年のことでした。この頃の私は陶芸に対する情熱はとても強く、勢いがありました。

最初は穴窯の見学が目的でしたが、気づけば作品を焼かせていただき、灯油窯まで貸していただくようになっていました。池や盆栽のある庭、茶室でいただいたお茶、そして由香利さんの心づくしの手料理、すべてが私の心を温めてくれました。

先生は美術教師やアパレル経営を経て、人生の後半に陶芸家へと転身された方です。

2018年にご夫妻は神居地区に移られましたが、新しい工房を訪ねることはなく、その後長く続いたコロナ禍で、私の情熱は陶芸から山にシフトしていて、陶芸を続けるかどうか考えるようになっていた時期です。

今考えるとあの状態からよく盛り返したなと思います。

窯を持ち、独立できた今「この知らせを届けたい」と真っ先に思ったのは、先生と由香利さんでした。

開窯を心から喜んでくれた先生は「よく気持ちが途切れなかったね」と。

本当は何度も途切れかけていました。

しかし、私のバランスを整えてくれるのは間違いなく、陶芸と山なのです。どちらかに傾き過ぎることもあるけれど、もう一方でちょうどよく整うのです。

先月、神居山で採ったタケノコを届けようと、新しい「一路窯」を訪ねることにしていました。
2週間ほど前に連絡をしていたので、先生は私の訪問を楽しみにしていました。

訪問直前に電話を掛けると電話口の由香利さんの声は沈み、告げられたのは――先生がゴルフの最中に倒れ、帰らぬ人となったという知らせでした。訪問予定日の一週間前のことでした。

胸が苦しくて、言葉が出ませんでした。
もっと早く行っていれば。もっと話がしたかった。
どんなに思っても、もう先生に会うことはできない。

私たちは、いつだって「いつか」と思ってしまう。
「また今度」と思ってしまう。
人生は思っているよりも、ずっと儚いものです。

先生の道具を譲り受けました。
先生の意志を引き継いで、未来に繋げていきたいと思います。

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